著作権とは ~弁護士が説明する出版法務の著作権法講座①~

2015.1.28|未分類

 みなさんは、「著作権」という言葉を見て、どのような権利を想定していますでしょうか。著作権という言葉は、頻繁にとまでは言わないまでも、テレビや雑誌などで目にする機会が多くなりました。最近の中高生であっても言葉だけなら聞いたことがある人が多いかもしれません。
このように、著作権という言葉は広く一般に知られていますが、実はどのような権利なのか、どのような法律なのかということを知っている人は少ないと思います。誤解を恐れずに言えば、出版業界におられる方も日々の業務の中で著作権を触れていても、著作権法の条文の理解に不十分さがあったり、誤解している方も見受けられます。
 このため、出版業に携わる人にとって、少しでも有益な情報の提供となるように、弁護士である私が、なるべく平易な言葉を用いて、出版業に関わる著作権法を説明するサイトを更新していきたいと思います。

1 著作権とは

1-1 知的財産権と著作権

  著作権は、知的財産権の一つと言われています。知的財産権とは、著作権以外にも特許権や商標権などがありますが,その特殊性は情報という目に見えないものを保護するために法律が規定しているところです。

1-2 著作権法

  著作権は、著作権法という法律によって規定されています。著作権法の第1条では,著作権法の規定として,下のように定めています。

この法律は、著作物・・・に関し著作者の権利・・・を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする
 
  ここで,注目していただきたいのは,「文化の発展に寄与すること」という所です。下で詳しく説明しますが,特許法などとの違いであり,この規定により,文部科学省の所管となっております。

2 特許法との違い

2-1 基本的発想

 先ほど、著作権は知的財産権の一種であると説明しましたが、著作権法は、特許法などの他の知的財産権と比較すると異質な要素が強い権利です。それは、特許法の基本的考えとしては、「産業の発達」すなわち、一言でいえばビジネスを目的としているのに対して、著作権法のそれは、「文化の発展」を目的としておりビジネスの要素が入っていないことが、あります。
  以下,特許法との異なる点を見ることにより,著作権法の目的の考えをより明らかにしたいと思います。

2-2 具体的な違い

 現在では、著作権においてもビジネスの要素がかなり入ってきていますが、基本的な発想としては、先に述べたとおりです。このような基本的考えの違いから、以下のような違いがあります。
① 権利の発生
 著作権法は、権利の発生に登録行為は必要としていない。なんらかしらの表現行為、思想または感情の表現がなされたときに、著作権は成立する。これを無方式主義と呼びます
 特許法、は、登録制度があり、申告、審査、登録という経過を経て、権利が発生する。
② 人格権の保護
 著作権法は、文化の保護、著作権を譲渡できるが、人格権は譲渡できない。
 特許法は、ビジネスの側面が重視されており、取引の阻害要因となりうる人格権は規定されず。
③ 保護期間
著作権法は,保護期間を死後50年(法人の場合公表後50年)と定めているのに対して,特許法は,保護期間が出願から20年としている。

3 まとめ

 ○ 著作権法は、知的財産権の一種である。
 ○ 著作権法の目的は,文化の発展であり,この点が他の知的財産権と異なる点である。
 ○ 法律の目的の違いから,著作権と特許権においては,権利の発生要件,人格権の保護の有無,保護期間において違いがある。

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