今回は,これまで出版権設定契約が作者サイドから解除される場合について述べていきたいと思います。出版契約には,大まかに出版権設定契約と利用許諾契約がありますが,今回は,著作権法上に規定のある出版権設定契約について述べていきます。
出版権の契約期間について,著作権法は,「設定行為で定めるところによる」(法83条1項)として,当事者同士が契約時に自由に決められるとしています。
もっとも,契約時に定めなかった場合には,その設定後,最初の出版があった日から3年を経過した日において消滅する(法83条2項)として,補充的に期間を定めています。
通常は、契約書を締結する場合には、その期間も定めますので、1年から3年程度にしておき、下で述べるとおり自動更新条項を入れておくのが合理的かと思います。
通常,出版権設定契約には,自動更新条項というものがついていることが一般的かと思います。この自動更新条項は,マンションなどの賃貸借契約と同様に,契約終了期間が過ぎても,契約が終わる前に「もう出版権設定契約を辞めますよ」と言わない限りは,ずっと契約が続いていくというものになります。
出版社側では,出版権設定契約を締結する場合,この自動更新条項がちゃんと入っているか確認すべきです。また、出版権設定契約の期間中は,出版社側は,継続出版義務を負うことになりますので,出版を今後しないと決めた契約については,契約満了時に更新停止をして無用な紛争にならないようリスク管理をしておくべきでしょう。
出版権の設定期間中にもかかわらず,作者側から出版権設定契約を解除できる場合がいくつか著作権法上に規定されています。この解除の原因は,出版社の義務違反による消滅と作者の権利としての消滅の2つに分かれます。
この場合、著作者側は無条件に、出版権設定契約を消滅請求することができます。これは、出版社が負う出版義務に対応するものとなります。作者側は、出版権設定契約を締結すると他の出版社で出版することができなくなりますので、出版社が出版義務を果たさない場合には無条件で作者側に出版権の消滅請求を認めたのです。
これも著作者の消滅請求の制度です。先ほどと違う点は、消滅請求が認められるには、事前に3か月以上の猶予を与えても出版社が義務を果たさなかったことが要件として加わることです。
複製権者である著作者が、著作物の内容が自己の確信に適合しなくなった場合に、出版社に通知して出版権を消滅させることができると著作権法84条3項は規定しています。
著作者は、出版権を設定しても、著作物に対する人格的利益は保持すると考えられており、この考えから、著作者側に修正増減を求める権利や、この出版権の消滅請求まで認められているのです。
ただ、出版社側も無条件で消滅請求をさせられたら、たまったものではないので、法は、この請求をするには著作者側に出版社の損害を補てんすることが必要と定めています。これにより、実際には著作者が出版権の消滅請求をするのは困難といえます。
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