出版契約書を作成するときの注意点~契約書の形式面のチェック事項~

2014.12.17|未分類

出版契約書

1 契約の当事者を間違えない

 

1-1 出版契約の当事者

  出版契約を締結する場合には、必ずその著作物の複製権者と契約を締結するようにしてください。せっかく出版契約を締結しても、契約の相手方が真の権利者ではなかった場合、真の権利者から著作権侵害で訴えられる危険があります。この時、真の権利者と新たに出版契約を締結できればいいのですが、これを拒否された場合は印刷した出版物を出版することができず、廃棄しなければならず多大な損害が出ることが予想されます。
  これは契約の相手を間違えないということは当たり前すぎることとは思いますが、著作権は譲渡が可能ですし、作者の死亡によって相続されることもあるので、権利者の確認については慎重すぎるに越したことはないのです。

 1-2 ゴーストライターを使用した場合

  昨年は、著名な作曲家が作曲したクラッシックの楽曲は、実は大学講師が作曲していたものだったとしてテレビのワイドショーでも連日取り上げられた事件がありました。いつの時代もこの手のゴーストライターの暴露話は尽きず、タレント本の9割はゴーストライターが使用されているという人もいます。
  ゴーストライターを使用することの善悪についてはここでは述べませんが、実際に出版業界においてゴーストライターを使用する必要性が一定程度存在することは認めざるを得ないと思います。
  このようなゴーストライターを使用して例えば小説を作成した場合、その本の著作権は、ゴーストライターを依頼した人物ではなく、実際に執筆したゴーストライター自身に著作権が帰属することになります。
  そして、ゴーストライターを依頼した人物とゴーストライターとの間で、一定の対価とともに、その小説における著作権の譲渡契約(ここでは便宜上「ゴーストライティング契約」といいます。)が締結されたといえるので、ゴーストライターを依頼した人物が複製権者になるものと思われます。したがって、出版会社は、ゴーストライターを依頼した人物との間で出版契約を締結することとなります。
  ただし、ゴーストライティング契約は、公序良俗に反するとして無効な契約であるとの考えも有力ですし、実際の裁判例でもゴーストライティング契約を無効と判断したものもあります。このため、念のためにゴーストライターとの間でも出版の許諾を受けておいたほうがいいでしょう。

 1-3 未成年者の場合

  少し前になりますが、綿谷りさんが高校在学中に執筆した小説が直木賞を受賞したとして話題となったことがあります。このような未成年の作家と出版契約を締結するには、通常の場合と異なる注意点があります。
それは、未成年者の場合、単独では契約を締結できず、両親などの同意が必要となることです。民法においては、未成年者は大人と違い判断能力が未熟なため、契約を締結しても無条件に取り消しをすることが認められています。このため、出版社としては、契約を取り消されないためにも、契約の相手方は、両親(親権者)を未成年者の代理人として締結する必要があります。
未成年者との間の出版契約はあまり頻繁ではないといえ、注意が必要です!
 

2 判子の意味

 

2-1 判子は必ずもらっておく

  契約は、口頭における合意でも法律的には成立しますが、契約内容について契約締結後に争いとなった場合に、契約内容を立証するために契約書の作成が有用であると前に説明しました。
  ただ、後に紛争となった時に、そんな契約書を作った覚えがないと言われてしまった場合に備えて、判子をもらっておく意味があります。契約書に判子が押されている場合には、内容を確認して判子を押したとみなされますので、後からそんな契約書は知らんという主張に対して効果的な反論ができることになるのです。

 

2-2 実印とは

  実印とは、住民登録をしている市区町村に、自身の判子の印影を登録申請して、受理された印鑑のことをいいます。印影が複雑となっている必要は必ずしもありません。言ってしまえば100均で購入した判子でも登録してしまえば実印となります。この実印は、不動産の売買契約等、普段の社会生活においても金額が高価であったりする重要な契約の際に使用されることがあります。
  契約書が実印で押されていた場合には、契約が成立したとする推定力が、通常の判子よりも強く働きます。それは,実印は普通の判子よりも,他人に渡る可能性が少ないので,実印が押されていたならば本人が内容を確認して契約したということが強く推定できるからです。
  契約の内容にもよりますが,出版契約のような重要な契約の場合,実印で契約を締結した方がいいといえます。

 2-3 割印,契印

   割印とは、2つの書面について、相互に関連があることを確認するため、2つの書類にまたがって押印するものです。契約書は2通作成して,1通ずつを持ち合うものですので,最低2枚以上作成します。この各契約書が,同一の内容であることを確認するために割印を押すのです。
契印とは、2頁以上の文書からなる書面が一つの契約書であることを確認するために押印するものです。後から契約書の一部を差し替えられたりする,無断で追加されることを防ぐために押すのです。ただ,各文書にページ数が割り振られている場合,契印は省略することもあります。

3 表題(タイトル)について

3-1 表題の決め方

 契約書の表題は,契約書の内容を反映するようなものをつけることが望ましいです。例えば,出版権設定契約のように重要な契約を締結する場合には,「出版権設定契約書」のように誰が見ても一目瞭然の題名にすべきです。

3-2 覚書の場合

 契約書の効果は,契約書に記載されてある内容によって決まりますので,覚書と表題に付けて「契約書」という表題にしていない場合であっても,契約の効果は発生します。
 ただし,覚書という題名にした場合,正式な契約の前の約束や,簡単な約束事というニュアンスになり,契約成立の効果が弱まることがあるので,出版契約を正式に締結するならば,題名は「出版契約書」とするべきといえます。

4 契約書の作成枚数

契約人数分作成して,1通ずつ保管するようにして下さい。

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