出版権設定契約の登録とその効果,出版社の義務~出版契約について③~

2014.12.16|未分類

出版権の第三者効力

  今回も前回に引き続いて,出版権の内容について,説明していきます。


 

1 出版権の第三者効

1-1 出版権の効果

A出版社が作家Zから,Zが執筆した小説について許諾を得て出版していた場合,B出版社から,その小説はうちが出版権を持っているから,すぐに出版を止めろと言われた場合

 出版権設定契約は,前回の記事でも説明したとおり独占権が一定の範囲で認められています。
 このため,B出版社としては,出版権を主張して,すぐにでもA出版社の出版行為を止めさせたいところです。
他方,A出版社としても,作家Zから許諾を得て出版しており,既に製本化しているのですから出版をみすみす止めたくありません。
 このような場合,どちらの言い分が通るのでしょうか。

1-2 出版権の登録

 ポイントは,出版権の登録の有無にあります。著作権法88条1項により,出版権の設定は,登録しなければ,第三者に対抗することができないと規定してあります。この登録は,文化庁に対して行う必要があります。
 このため,B出版社は,出版権を登録していない限り,A出版社の出版行為を止めさせることはできないことになります。

1-3 海賊版業者に対して

 先ほど,出版権の設定は,登録しなければ,第三者に対抗することができないと説明しましたが,この「第三者」とは,正当な第三者に限るといわれています。
 このため,出版権者は,海賊版業者など,無断で著作物を複製販売している者に対して,差し止め請求をすることができます。
 つまり,海賊版業者に対して,出版権侵害を主張するにあたって,登録は不要です。

2 出版権者の義務

 出版権は、一度契約を結べば出版社にとって、非常に強い契約である反面、法律は著作者の権利保護のため、出版社に一定の義務を課しています。

2-1 出版義務(著作権法81条1項)

 出版権者は、原稿などの引渡しを受けてから6か月以内に出版する義務を負います。これは,出版権設定契約を締結すると,いかに著作者といえど,出版することができなくなるため,著作者の保護の為に設けられた規定になります。
 そして出版権者がこの義務に違反した場合は、複製権者は出版権者に通知して出版権を消滅させることができます。

2-2 継続出版義務(著作権法81条2項)

 出版権者は著作物を慣行に従い、継続して出版しなくてはなりません。これも出版義務と同様に著作者の保護の為です。
 出版権者がこの義務に違反した場合も、出版権を消滅させることができることも出版義務と同じです(ただし,要件あり)。

2-3 修正・増減・絶版請求権(著作権法82条,84条)

 著作者は,著作物を出版権者があらためて複製する場合には,正当な範囲内において,修正・増減を加えることができます。これは,著作者の人格的利益を保護するために認められた規定です。
ただ,内容を変更すれば出版社にとっては費用がかさむことになりますから,どんな場合でも認められるわけではなく,「正当な範囲」に限定されます。

 また,出版権者は、出版権が設定されている著作物を増刷したり改訂版を出版するなどして複製する場合は、事前に、著作者に通知しなくてはいけません。著作者の修正・増減権の行使の機会を確保するためです。

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